株式会社清美堂 開発担当
―――Airy noteの開発を任された時の最初の印象は?
開発は全社員一丸となって進めるスタートでしたが、私が舵取りを任されることになり、「これは頑張らないと!」と思いました。もともと手製本やハンドメイドが好きで自分で何かを作る経験はありましたが、商品として形にするのは初めてで、不安もありました。それでも、「挑戦してみたい」という気持ちが大きかったです。
―――「超軽量」という目標を達成するために最も苦労した点は?
最も苦労したのは、目標をクリアするための素材探しと調整です。「世界一軽い」というスローガンをもとに開発がスタートしましたが、軽さを追求しつつ、ハードカバーの強度や耐久性を保つのは簡単ではありませんでした。さらに、紙が薄くても裏移りしないことが求められたため、非常に細かな調整が必要でした。このような条件を一つひとつクリアするのが大変でしたね。
―――壁紙を素材として採用した理由と、その加工で特に難しかった部分は?
壁紙を採用した理由は、機械で表紙を貼る工程に対応できる素材でありながら、見た目に重厚感を持たせることができるためです。手作業で解決できることもありますが、量産体制を考えると、自社の機械で対応可能な素材が必要でした。
デザイナーの相川さんから壁紙の提案があり、試作して加工が可能だったため採用を決めました。しかし、壁紙は通常の紙素材とは異なり、厚みや糊の付き具合が大きく異なるため、調整に苦労しました。最後の最後まで改良を重ね、完成に至りました。




―――黒染めの小口を実現する過程でのエピソードを教えてください。
小口染めは、過去にマーブル染めの経験があったため難しくないと思っていましたが、実際は予想以上に試行錯誤が必要でした。当初は金色の染めを試みたものの、色や光沢がうまくいかず、ラメを入れるなど工夫を重ねましたが納得いく仕上がりにはなりませんでした。最終的に重厚感のある黒に落ち着きましたが、この選択が結果的に「他にはない特徴」になったと思います。
―――オーク手帳用紙を採用した経緯や理由は?
「軽量でありながら、ページ数が多いノート」という目標を実現するため、薄くて丈夫で、裏移りしない紙を探すことが必要でした。複数の紙を実際に製本して試した結果、条件に最も合致したのがオーク手帳用紙です。この紙は問屋さんから紹介され、滑らかな書き心地と耐久性が高く、特に万年筆などでの筆記にも適していました。
―――社内での試作・テストで印象的だったエピソードは?

社内では、ノートを雑に扱って耐久性を検証するテストが印象的でした。社員が仕事中にお尻のポケットに入れて座ったところ、ノートが曲がってしまったり、万年筆で書いたりインクを垂らして試したり、色んなことを自由に試しました。また、社員それぞれが自分の好きな色で小口を染めたいと言い出し、試作が楽しい雰囲気で進んだのを覚えています。
―――開発を終えた後、このノートをどう使ってほしいと思いますか?
Airy noteは、家やオフィスだけでなく、カフェやホテルロビーなど、おしゃれな空間でぜひ使っていただきたいです。特に、素敵な表紙のデザインは「持ち歩きたい」と感じさせる魅力があると思います。また、文房具は消耗品でもあるので、プレゼントとしても喜ばれる商品です。
―――他の商品アイデアや、今後挑戦してみたいプロジェクトは?
今、製本キットの開発を進めています。これは、製本の構造を知ってもらいたいという思いから始まったプロジェクトで、手軽に本格的な製本が体験できるキットを目指しています。また、「強ミシン綴じ1」の技術を活かした新しい製品を開発し、この技術をもっと広めていきたいと考えています。

- 1. 清美堂の独自技術。中ミシン綴じよりもさらに強度をあげるため寒冷紗ごと本紙をミシンにかけている。 ↩︎