製本会社が手がける雑貨文具ブランド

清美堂 清美堂
清美堂

製本会社が手がける雑貨文具ブランド

インタビュー#3 製造プロセスの緻密さを伝える

SCROLL

インタビュー#3 製造プロセスの緻密さを伝える

株式会社清美堂 工場長


―――Airy noteを製造する際、これまでの製本とは異なる点は何でしたか?

私は断裁を担当していますが、普段の製本では扱わない薄い紙、特殊な芯材、そして癖のある壁紙をきれいにカットするのが非常に難しかったです。特に壁紙は丸まった癖が残っていることが多く、断裁の際に通常よりも刃こぼれが早く起こります。そのため、刃を研ぎに出すタイミングを通常業務と調整しながら進める必要がありました。また、他の工程でも普段使わない素材を扱うことで特別な調整が必要でした。これを試行錯誤で判断する期間が一番大変だったと思います。

―――工場で特に注力したポイントや工程は?

すべての工程に注力しましたが、特に表紙貼りには力を入れました。ちょうど新しい設備に買い替えたタイミングでもあり、使い慣れていないこともあって細かい調整が求められました。軽い芯材を壁紙に貼る工程では、糊の相性や温度の調整が特に重要でした。創意工夫を重ねながら進めたことで、最終的には効率的で安定した作業ができるようになりました。

―――壁紙や芯材の加工で、工場の技術が発揮された部分はどこですか?

秘密にしている部分も多いですが、特に断裁と接着の工程には工場の技術が大いに発揮されています。
また、プレス作業では職人の経験と知識が求められます。微妙な力加減や素材の特性を見極める「人のカン」が必要で、これが高品質な仕上がりを支えています。

―――「強ミシン綴じ」という名称が生まれた背景を教えてください。

「強ミシン綴じ」という名称は、デザイナーさんからの提案をもとに決めました。この綴じ方自体はかなり前から行っていたものですが、一般的な「中ミシン綴じ」とは異なります。
一般的には、ミシンで縫った後に寒冷紗を貼るのですが、私たちの方法は、見返しの背部分に寒冷紗を先に貼り、その上からミシンで縫い付けます。この一連の流れをオリジナルの機械で行っており、強度が非常に高いのが特徴です。これまでは説明が難しく、「ちょっと違うんです」としか伝えられませんでしたが、このプロジェクトを機に「強ミシン綴じ」という独自の名称を付け、しっかりと差別化を図りました。

―――小口の黒染めが工場内でどのように行われているのか、詳しく教えてください。

小口の黒染めはすべて手作業で行っています。強ミシン綴じが終わった状態の本紙を揃えて固定し、刷毛を使って黒いインクを塗布します。このインクは試験を重ねて調整した独自の調合です。毎回濃度を確認し、手で触っても色移りしないように管理しています。細かい作業ですが、この工程が製品に高級感を与える重要なポイントになっています。

―――特にこだわった部分や、妥協せずに仕上げた箇所は?

ju:taleインタビュー

最も妥協せずにこだわったのは壁紙です。壁紙には凹凸があるものが多く、加工が難しいものもありました。使いやすい素材もある中で、最も完成品が美しいものを選ぶため、不良率が増えるリスクを承知で採用しました。この壁紙がブランドの顔になると考え、チームで一致団結して挑戦した結果、素晴らしい仕上がりを実現できました。

―――工場内での社員の反応や、意識の変化はありましたか?

プロジェクト開始前後では、工場内の意識が大きく変わりました。それまで「指示されたことをやる」思考だったのが、「自分で調べて考える」思考に切り替わりました。担当分けをして各自が責任を持って作業を進め、お互いに助け合いながら調整を行うことで、全体のスキルアップにもつながったと感じています。

―――工場長から見て、Airy noteの特筆すべき魅力は何だと思いますか?

何といっても「軽さ」です。普段の絵本やパンフレットなどの製本作業とは違い、Airy noteの材料を触るたびにその軽さに驚かされます。ハードカバーでありながら、この軽さを実現したノートは他にないと思います。使う人に「こんなに軽いの?」と驚いてもらえることを期待しています。

上部へスクロール
上部へスクロール